肘内障(ちゅうないしょう)は、特に幼児や小児に多く見られる肘の怪我で、正式には「肘関節周囲軟部組織の部分脱臼」とも呼ばれます。これは、前腕の骨である橈骨(とうこつ)の頭が肘関節の靭帯から部分的にずれてしまう状態を指します。日常的な動作や遊びの中で、腕が急に引っ張られたりねじれたりすることで発生します。
肘内障は、通常、次のような状況で発生します
突然腕を引っ張られたとき: 親や保護者が子供の腕を急に引っ張ったり、子供が転びそうになったときに腕を掴んで引き上げたりすることで、肘関節に過度の力が加わると、肘内障が発生することがあります。
遊びの中での怪我: 子供が手をつないでブランコのように振り回されたり、強く引っ張られたりする遊びの中で、橈骨頭が靭帯から外れることがあります。
転倒やねじれ: 子供が転倒した際に、手をついてバランスを取ろうとする動きが原因で、肘関節に異常な力が加わることもあります。
このような怪我は、骨や筋肉がまだ発達途中にある小児に特有のもので、大人ではほとんど見られません。
肘内障の主な症状は、次のようなものです。
腕を動かさない
肘内障が発生した子供は、腕を痛がって動かさなくなります。特に肘を曲げたり伸ばしたりする動作が困難になります。腕をだらりと垂らしたまま、動かさないことが典型的な症状です。
痛みと不快感
怪我の直後に子供が痛みを訴えることがありますが、強い痛みが持続することは少なく、腕を動かそうとする際に痛みが現れます。痛みが激しくなくても、腕を動かさないことで異常に気づくことが多いです。
腫れや外見上の変形はほとんどない
肘内障では、肘や腕が腫れることはほとんどなく、外見上の明らかな変形も見られません。そのため、見た目からは怪我の重篤度を判断するのが難しいことがあります。
肘内障は、典型的な症状と発生状況をもとに、医師が診断を行います。画像診断(X線など)は通常必要なく、医師の診察だけで判断されることがほとんどです。
肘内障は、医師が患者の腕の動きを観察し、典型的な症状や痛みの位置から診断します。患者の年齢や怪我の経緯も重要な診断要素となります。
肘内障の治療は、専門医が行う「整復術」と呼ばれる方法で、ずれた橈骨頭を元の位置に戻します。この手技は短時間で行われ、多くの場合、治療直後に子供は痛みを感じなくなり、腕を自由に動かせるようになります。
肘内障の治療後、特別なリハビリテーションは通常必要ありません。子供はすぐに日常生活に戻ることができ、再発防止のために、腕を急に引っ張らないよう注意することが重要です。肘内障が治療後に再発することもありますが、繰り返し同じ怪我が起こらないように注意を払えば、多くの場合、問題なく回復します。
肘内障は、幼児や小児にとって比較的よく見られる怪我ですが、予防が可能です。子供の腕を引っ張るような動作を避け、特に遊びや歩行中に子供の手を強く引っ張らないようにすることで、肘内障のリスクを減らすことができます。また、保護者や教育者がこの怪我について理解しておくことで、迅速な対応が可能になり、子供にとっての不安や痛みを最小限に抑えることができます。