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ロコモティブシンドロームとは?

ロコモティブシンドローム(ロコモティブ症候群)、略して「ロコモ」は、運動器(骨、関節、筋肉、神経など)が加齢や疾患により機能低下を起こし、移動機能が衰えることで、自立した生活が困難になる状態を指します。ロコモは、特に高齢者に多く見られ、放置すると要介護状態に陥るリスクが高まることから、予防と早期対応が非常に重要です。

日本は急速に高齢化が進んでおり、高齢者の生活の質(QOL)の維持が社会全体の課題となっています。ロコモは、健康寿命の延伸を阻害する主要な要因の一つとされており、医療界でもその予防と治療が重要視されています。

運動器の機能が低下すると、歩行や日常生活に必要な動作が困難になり、外出が減少し、活動範囲が狭まることで、さらなる身体機能の低下を招くという悪循環に陥ります。このような運動器の機能低下を総称して「ロコモティブシンドローム」と呼び、予防・治療を通じて健康寿命の延伸を図ることが求められています。

ロコモティブシンドロームの原因

ロコモティブシンドロームの原因は、運動器のさまざまな機能低下に起因します。以下に代表的な原因を詳述します。

骨の変化(骨粗鬆症など)

骨粗鬆症は、骨密度が低下して骨が脆くなる状態であり、特に高齢者においては転倒時の骨折リスクが大きく増加します。骨折が発生すると、長期間の安静が必要となり、これが筋力低下を招く一因となります。特に股関節や脊椎の骨折は、歩行能力に大きな影響を与え、ロコモの進行を加速させる要因となります。

関節の変化(変形性関節症など)

変形性関節症は、関節軟骨が摩耗し、関節が変形して痛みや可動域の制限を引き起こす疾患です。特に膝や股関節に発生することが多く、歩行困難や立ち座りが不自由になるなど、移動機能に大きな支障をきたします。関節の痛みが続くと、活動量が減少し、筋力や持久力の低下を招くことがあり、これがロコモの一因となります。

筋肉の変化(サルコペニアなど)

サルコペニアは、加齢に伴う筋肉量や筋力の低下を指します。筋肉は骨や関節を支え、動作を助ける役割を持っていますが、筋力が低下すると、立ち上がりや歩行が困難になります。サルコペニアは、骨粗鬆症や関節症と同様にロコモの発症に大きく寄与し、これらが組み合わさることで症状が悪化しやすくなります。

バランス機能の低下

バランス機能の低下は、転倒のリスクを増大させ、骨折や打撲などの外傷につながる可能性があります。バランス機能は、筋肉や神経、感覚器の協調によって維持されていますが、これらの機能が低下することで、転倒しやすくなり、日常生活における移動能力が制限される原因となります。

神経系の障害

脳卒中や脊髄損傷など、神経系の障害もロコモティブシンドロームの原因となり得ます。これらの障害は、筋肉の制御やバランス感覚に影響を与え、運動機能を低下させます。

ロコモティブシンドロームの症状

ロコモティブシンドロームの症状は、以下のような形で現れます。これらの症状は徐々に進行することが多く、早期の発見と対応が重要です。

歩行速度の低下
ロコモの初期段階では、歩行速度が遅くなり、特に外出時に疲れやすくなります。また、歩幅が狭くなり、歩行が不安定になることで、転倒リスクが高まります。

立ち座りの困難

椅子や床から立ち上がる動作が難しくなり、補助なしで立ち座りができなくなることがあります。この状態は、筋力低下や関節痛の進行によって引き起こされることが多いです。

階段の昇降が困難

階段の昇降が難しくなり、特に階段を下る際に不安を感じることがあります。これは、筋力とバランス機能の低下が原因であり、日常生活における活動範囲が制限される結果となります。

転倒の頻度が増える

ロコモの進行に伴い、転倒する頻度が増えることがあります。転倒は、骨折や打撲などの二次的な障害を引き起こし、さらに運動機能を低下させる悪循環を生み出します。
身体的な疲労感の増加
軽い運動や日常的な活動でも、以前よりも疲れを感じやすくなります。身体の機能が低下することで、活動量が減少し、これがさらに疲労感を増幅させる要因となります。

ロコモティブシンドロームの診断と評価

ロコモティブシンドロームの診断には、医師が行う身体検査と評価が含まれます。日本整形外科学会では、ロコモティブシンドロームのリスクを簡便に評価するための「ロコモ度テスト」を推奨しています。このテストでは、以下のような項目が評価されます。

片脚立ちテスト

片脚で立った状態をどれだけ維持できるかを評価します。このテストでは、20秒間片脚で立ち続けられるかどうかが基準となり、これができない場合は、バランス機能の低下が疑われます。

2ステップテスト

2歩分の歩幅を測定し、その歩幅が身長に対してどれだけ長いかを評価します。歩幅が狭い場合は、筋力や関節の柔軟性の低下が示唆されます。

立ち座りテスト

椅子から何度か立ち上がる動作を繰り返し、その時間や動作のスムーズさを評価します。このテストでは、立ち上がる動作が遅い場合や補助が必要な場合、ロコモのリスクが高いと判断されます。

ロコモティブシンドロームの予防と治療

ロコモティブシンドロームの予防と治療は、運動療法と生活習慣の改善を中心に行われます。以下に具体的な方法を紹介します。

運動療法

ロコモの予防には、筋力やバランス機能を維持・向上させるための運動が効果的です。特に、筋力トレーニングやストレッチ、バランス訓練が推奨されます。これらの運動は、自宅で行うことが可能で、継続的に取り組むことが重要です。
筋力トレーニング: スクワットや階段昇降などの下半身の筋肉を鍛える運動が効果的です。これにより、立ち上がりや歩行が安定し、転倒リスクを減少させます。
ストレッチ: 関節の柔軟性を高めるためのストレッチを行い、可動域を維持します。特に、腰や膝、足首のストレッチが重要です。
バランス訓練: 片脚立ちやバランスボールを使用した運動など、バランス感覚を鍛える運動を取り入れ、転倒予防に努めます。

食事療法

骨や筋肉の健康を維持するために、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。カルシウムやビタミンD、タンパク質を豊富に含む食品を積極的に摂取し、骨密度の維持と筋肉量の増加を目指します。
カルシウム: 牛乳や乳製品、小魚、大豆製品などから摂取します。
ビタミンD: 魚類や卵黄、日光浴を通じてビタミンDを補給し、カルシウムの吸収を促進します。
タンパク質: 筋肉を構成するために必要なタンパク質を、肉類や魚、豆類、卵などから摂取します。

生活習慣の改善

日常生活の中で、無理なく継続できる活動を増やすことがロコモ予防につながります。定期的な散歩や家事、軽い運動を日課にすることで、運動器の機能を維持し、健康寿命を延ばすことができます。
歩行: 毎日の歩行を意識して増やすことで、足腰の筋力を維持します。歩行距離や歩数を目標にして取り組むと、継続しやすくなります。
姿勢の改善: 正しい姿勢での立ち方や歩き方を意識することで、関節や筋肉への負担を軽減し、ロコモの進行を防ぎます。
適度な体重管理: 肥満は運動器に過剰な負担をかけるため、適正体重を維持することが重要です。

医療機関での治療

ロコモの進行が進んでいる場合や、自己管理が難しい場合には、医師や理学療法士の指導を受けることが推奨されます。専門的なリハビリテーションや、必要に応じて薬物療法や外科手術が行われることもあります。
リハビリテーション: 専門家の指導のもとで、個々の状態に合わせたリハビリテーションプログラムが提供され、運動機能の改善を目指します。
薬物療法: 痛みの管理や骨密度の維持を目的に、薬物が処方されることがあります。特に骨粗鬆症がある場合、骨折予防のための治療が行われます。
外科手術: 重度の関節症や骨折がある場合には、手術が必要になることがあります。これにより、痛みの軽減や機能回復が図られます。

ロコモティブシンドロームの重要性

ロコモティブシンドロームは、高齢者が自立した生活を維持するために克服すべき重要な課題です。適切な予防と早期対応により、健康寿命を延ばし、生活の質を高めることが可能です。家族や医療従事者が協力してロコモに対処することで、個人の健康を守り、社会全体の福祉向上に寄与することができます。